英国と欧州ではライフサイエンス分野が急速に成長してきており、どちらの地域でもこの分野ではすでに確立された市場と新興市場を有しています。地域や治療分野を問わず、強力なホットスポットが豊富に存在し、世界レベルの研究や業界の専門知識と相まって、ヨーロッパ全体においてバイオテクノロジーのイノベーションが急速な拡大をもたらしています。
欧州で最も発達したライフサイエンス市場の一つとして独自の役割を果たしてきた英国ですが、現在、世界のバイオ医薬品のトップ企業のうち25社、医療技術のトップ企業のうち30社が英国に進出しています。世界的に有名な学術研究機関が英国にはあり、基礎科学から臨床研究に至るまで、産業界とのコラボレーションが幅広く行われています。 これには、公的資金で運営されている国民保健サービス(NHS)との主な臨床・研究パートナーシップに加えて、独立した医療規制機関である医薬品・医療製品規制庁(MHRA)の活用も含まれており、極めて敏捷かつ迅速な対応が可能となっています。
2021年7月に英国政府が政策目標として発表した「ライフサイエンス・ビジョン」では、今後10年間で800億ポンドの資金提供を公約することで、英国のライフサイエンス分野を拡大・活性化する計画の概要が示されており、英国のバイオテクノロジー分野は現在急速に成長しています。2018年末までに英国の海外直接投資株式は5%増加し、パテントボックス税制の導入(2013年)以降、企業は英国で登録された特許発明から得られる利益に対して低税率(10%)の法人税の適用を受けることができます。
英国と欧州では、ケンブリッジ(英国)、ミュンヘン(ドイツ)、そして西欧の次期クラスター地域であるベネルクスに新たなバイオテクノロジーのホットスポットが出現しています。これらの地域では、主にサービスプロバイダー、がん治療薬、免疫治療薬、神経疾患などにおいての成長が見られます。また、ファイザー、ロシュ、ノバルティスなどの大手製薬会社の多くが欧州にグローバル本社を置いています。特に、年間GDPの11%という欧州最大の医療費支出国であるドイツでは、2020年に株式市場やベンチャーキャピタルから30億ユーロという記録的な資金がバイオテクノロジー市場に投入されました。この背景には、新型コロナウイルスのパンデミックが大きく影響しており、このパンデミック自体が欧州のバイオテクノロジー市場と世界市場に対するその潜在力にスポットライトを当てることになりました。バイオテクノロジーに対するEUの資金提供は、2019年の時点で全体支出の約15%でした。また、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの国際・政府間連合であるベネルクス連合では、現在、毎年1億1500万ユーロ以上のバイオテクノロジーのベンチャー資金と、3億ユーロ以上の公的資金を調達しています。
欧州は間違いなくバイオテクノロジー分野においての一大勢力であり、さらに成長する大きな可能性を秘めています。主要となるイノベーションと資金調達の加速化により、この極めて収益性の高いこの市場でグローバル企業は利益を生み出し、成長を遂げることができるでしょう。