2022年に入ってから、新型コロナ危機、また最近ではウクライナ戦争による世界的なガス需要の急増により、ガス価格がかつてないほど高騰しています。
こうした状況から、エネルギー業界では費用対効果の高いソリューションの開発が急がれています。市場では、再生可能エネルギーのコストを削減すると同時に、再生可能エネルギーの導入率を向上させるよう、各方面からの圧力が高まっており、新しい技術やソリューションが求められています。欧州環境庁によると、EUは2030年までに総エネルギー消費量の32%を再生可能資源でまかなうという目標を掲げています。近年、グリーンエネルギー関連のスタートアップ企業への投資の増加が続いています。2018年以降、欧州と北米では、グリーンエネルギー投資が67%以上の伸びを示し、業界リーダーとして浮上してきました。この記事では、エネルギー分野の技術開発において最も注目されている動向をみていきます。
人工知能と予測分析
人工知能(AI)は、エネルギーと公益事業の分野で変革的な効果をもたらしています。需要予測や資源配分の管理に利用され、無駄を最小限に抑えながら送電網全体の電力供給を確保する役割を果たしています。再生可能エネルギー分野では、蓄電のための時間が限られており、電力の供給地域が限定されるため、非常に重要な役割を担っています。
専門家によれば、近い将来、エネルギー分野に特有のソリューションへのAIの活用、再生可能エネルギーの創出効率を高めるための予知保全技術、サイバー攻撃を防ぐためのエネルギー網のセキュリティ向上など、新しい方法でAIを活用するスタートアップ企業によるさらなる技術革新が生まれるといいます。
バイオエネルギー
バイオマスやバイオ燃料から得られるエネルギーは、膨大な電力を生み出す可能性を秘めています。近年、この潜在的な力を引き出す試みが盛んに行われています。欧州では、バイオエネルギーの利用が増加しており、2000年以降、最大で150%伸長しました。2021年時点で、ドイツは10,449ギガワットという欧州最大のバイオエネルギー設備容量を有しています。これは、その年の欧州のバイオエネルギー容量の25%に相当します。多くのシナリオでは、バイオマスの利用がさらに大幅に増加すると予測されており、2050年までにエネルギー生成と材料生産のためのバイオマスの利用が70〜150%増加するとするものもあります。 国際エネルギー機関(IEA)は、2023年までにバイオエネルギーが再生可能エネルギー生産の30%を占めるようになると予測しています。調査によると、生体物質をエネルギーに変換する新たな手段とそのエネルギーの実用化を図るプロジェクトの増加が間近に迫っています。
インターネット・オブ・エネルギー(IoE)
従来、建設時よりセントラル型のアーキテクチャが採用されてきた電力システムが、業界に新たな課題をもたらしています。IoEは、これらの課題を解決し、ビルのエネルギーシステムの効率化と最適な設計を実現します。IoEは、ユーザー間のエネルギー取引においてインテリジェントに配電を管理します。エネルギーインフラにおけるこの新しいパラダイムは、近代的な技術プラットフォームの管理においての高レベルな自動化と、エネルギーの取引や流通を促進するために市場が使用する金融フレームワークが含まれます。人工知能は、ブロックチェーンなどの他の新しい技術の潮流とともに、この分野で大きな役割を果たすでしょう。このような技術の組み合わせによって、電力会社はリアルタイムでデータ駆動型の意思決定や予知保全を行い、効率性を高めると同時に、顧客体験と満足度を向上させることが可能になります。
CO2排出、気候変動、非再生可能資源の枯渇に対する社会的な懸念は、グリーンエネルギー関連のスタートアップ企業を新興産業として位置づける上で重要な要素となっています。再生可能エネルギー分野では、膨大な量の技術革新と投資が行われています。現在行われている、あるいは開発中のイノベーションの多くは、互いに影響を与え合うものです。しかし、それには官民からの適切なサポートとコミットメントが必要です。気候変動に対する世界的な動きは、再生可能エネルギー市場にとって正しい方向への後押しとなるかもしれませんが、現段階ではまだまだ未成熟であり、絶えず進化を続けています。しかし、ひとつ確かなことは、エネルギーは単なる商品ではなく、戦略物資であり、現代社会にとって不可欠なものであるため、この分野の改善の必要性は人類にとって極めて重要であるということです。