医療技術の一面には、特定の疾病の予防、診断、治療のために機能する機器の利用があります。世界的に見ると、医療技術産業は4553億ドル以上の規模を誇り、2028年には年平均成長率5.4%で6579億ドル以上に達すると予測されています。特に欧州の医療技術市場は2020年に1575億ドル超を生み出し、2018年の欧州全体の医療費の7.4%超が医療技術に費やされています。このように、ヨーロッパ市場は米国に次ぐ医療技術の中心地として急速に台頭しています。
ヨーロッパの医療技術市場においては、ドイツが最大の市場シェアを持ち、フランス、英国、イタリア、スイス、スペインがそれに続きます。2019年現在、欧州には約27,000社の医療技術企業があり、中小企業が欧州の医療技術産業のほぼ95%を占めています。欧州にあるこれらの中小企業の大半は、会社規模が従業員数50人以下の小規模・零細企業に分類されます。
欧州では、GDPの平均10%が国民医療に費やされており、このうち医療技術に費やされる割合は約7.2%と、GDP全体の1%未満に過ぎません。しかし、医療技術への支出は国ごとに大きく異なり、国によっては医療費総額の5%から10%に及ぶこともあります。全体として、欧州における医療技術への支出は、2019年には一人当たり約213ドルに達したと推定されています。体外診断薬は現在、欧州の医療機器市場で最大の分野であり、2024年までに12.9%の市場シェアを占めると予測され、心臓病学、画像診断、整形外科、眼科がそれに続きます。
近年、欧州市場を加速させてきた医療技術のなかには、いくつかトレンドの高まりを見せているものがあります。健康モニタリングや治療用追跡デバイスなどの医療用ウェアラブルデバイスの増加傾向は、今後数年間の医療技術の需要を促進するでしょう。また、遠隔患者モニタリング装置、革新的な外科手術技術、電子健康記録(EHR)の適用に加え、これらのウェアラブルデバイスなど、医療技術における人工知能(AI)の応用が増加しており、欧州市場を活性化させるものと期待されています。電子健康記録の一例としては、2024年までにすべての医療サービスにおいて「コアデジタル化」を実現するという目標を掲げている英国の国民保健サービス(NHS)が挙げられます。英国に限らず他の欧州諸国でも同様の適用が始まっており、成長を続ける欧州の医療技術市場を今後さらに加速させるものと予想されています。