ジョイントベンチャー(JV)とは、2つ以上の事業体の間で行われる協力関係のことで、多くの場合、新しいプロジェクトや事業活動を開始することを目的としています。各企業はジョイントベンチャーに資産を出資し、それに応じた利益、損失、コストに対する責任を分担します。JVは、不確実な市場においてリスクを共有したい企業や、大規模な資本投資のコストを分担したい企業にとって理想的な形態といえます。言いかえれば、これは戦略的成長のための非常に効率的な手段であり、新しい技術や現地におけるノウハウを迅速に手に入れることができます。
ハーバード・ビジネス・レビュー誌は、2020年までの過去35年間のジョイントベンチャーに関連する傾向を分析する調査を行いました。それによると、JVは景気後退後の回復期に最も活発に行われることが分かっています。JVは、資本の制約とリスクの最小化により、M&Aの有力な代替案と考えられています。
有機的成長と比較して、JVを通じた投資はより迅速にリターンを生み出すことができます。
近年、JVの人気は下火になっていましたが、特に新市場への進出を目指す多国籍企業やアジア企業の間で、復活の兆しを見せています。INREVの調査によると、世界の投資家の27%がジョイントベンチャーへの投資を増やすことを計画しています。
英国は、欧州での取引を目指すアジア企業にとって足がかりとなり得ます。ブレグジットにもかかわらず、英国は依然として欧州で最高額とされる日本からの海外直接投資を受けています。日本企業は通常、英国に地域本部を設立するか、企業を買収して市場に参入します。英国は世界有数の経済大国であり、世界銀行の調査によると、ビジネスの進めやすさで7位にランクインしています。高いスキルを備えた優秀な専門家、金融、ビジネスサービスへのアクセスが容易であり、アジアやアメリカとの貿易に便利なタイムゾーンであることからも、英国はアジア企業にとって最も魅力的な場所の一つとなっています。さらに、2020年10月、英国は日本と経済連携協定を締結しました。この協定は両経済圏に合わせたもので、デジタルやデータ、金融サービス、飲食、クリエイティブ産業などに大きなメリットをもたらすとされ、既存のEUの協定を超える協力関係が確保されています。
英国市場の制覇を目指し、買収よりも少ない投資で迅速な事業規模の拡大を目標とするアジア企業にとって、ジョイントベンチャーは最も都合のよい方法のひとつと言えるでしょう。現地企業とのJVは、両者が等しく成長の最大化を動機づけられるため、日本企業にとっても利益の増大を見込むことができます。このモデルでは、日本企業は、パートナーとなる企業の評判、既存の取引関係、流通網、規模の経済の可能性といった強みから恩恵を受けることができます。
このように、ジョイントベンチャーを通じて、海外の企業は、知識、現地市場のノウハウ、あるいは流通やマーケティングチャネルへの迅速なアクセスを得ることができます。これらのメリットは、ジョイントベンチャーを通じてリスクとコストを共有できない限り、機会を追求するのに必要な資本、資源、専門知識を持ちえない中小企業にとって極めて重要なものだといえます。