英国と欧州のテック・デジタル市場にとって、2020年は385億ユーロを超える資金調達を行った成功の年でしたが、2021年の上半期はすでにこの数字を上回り、これまでに438億ユーロという記録的な数字でベンチャーキャピタルが調達されています。2021年に締結されたベンチャー企業の契約数が、前年の約半分であることを考えると、この調達資金額は驚くべきものです。2020年には合計5,200件の資金調達が行われたのに対し、今年はすでに2,700件が締結されており、現在も増え続けています。
スウェーデンのフィンテック企業Klarna は、2021年前半の2回の資金調達ラウンドで16億ドル以上の調達に成功しました。また、ドイツの株取引アプリ「Trade Republic」は、2021年の5月だけで9億ドル以上の資金調達に成功しています。また、今年の欧州市場で活躍しているのは、欧州のテック企業だけではありません。東南アジアのスタートアップ企業は、2021年の上半期に44億ドルの投資を生み出しています。これらの取引のほとんどがシリーズBやシリーズAの資金調達ラウンドである一方で、10%がシリーズCのラウンドで発生しています。これは、英国と欧州が、東アジアの新興企業が参入し拡大するテクノロジー市場として成長を続けるリーダーであることを物語っています。
欧州を拠点とするテック企業は、前年をはるかに上回る収益を上げており、2020年の新型コロナウイルスの世界的流行がもたらした経済的な不確実性に多少なりとも抵抗しているように見えます。航空業界などとは対照的に、テクノロジー・デジタル業界は、オンラインやデジタルサービスの加速により、パンデミックの間にも大きく成長しました。欧州のヘルステック企業は近年劇的な成長を見せており、2016年の80億ドルから2021年には410億ドルに増加しています。これは主に遠隔医療、臨床運用ソフトウェア、インシュアテックの導入に加えて、遠隔モニタリング、AI関連製品、デジタル治療の利用が増加したことによるものです。特に英国は、ヘルステックのグローバルリーダーとして台頭しています。2020年のヘルステック投資額は23億ドルで、米国(386億ドル)、中国(122億ドル)に次ぐ世界第3位であり、グローバル企業が参入する有力な市場として英国は確固たる地位を築いています。
欧州では、2020年12月に欧州デジタル市場法(DMA)の実施案の概要が発表されました。欧州委員会によるこの法案が可決されれば、欧州のデジタル市場における競争がさらに激化することになります。この法案は、最終的に、ソーシャルメディアなどのビッグテック企業が市場勢力を乱用することを防ぎ、より多くの新しい中小企業が市場に参入することを可能にします。DMAは、東アジアのスタートアップ企業や中小企業のテック·デジタル分野への市場参入にとって極めて重要な意味を持ち、欧州全体での市場シェアを高め、この市場への乗り出しを増大させるはずです。