英EU離脱(ブレグジット)が英国製造業へ与えた影響

英国の製造業市場は力強い成長軌道に乗っており、2015年から2020年までの産業成長率は年2.1%で、年間7576億ドル以上の収益を生み出しています。英国は製造業の先進国であるとともに、デジタル・AI、自動車、航空宇宙などのハイテク分野におけるグローバルリーダーとして位置づけられています。

 

英国の製造業は、輸出の約45%を占めているほか、英国国内の民間企業の研究開発費の65%以上を占めています。2020年1月31日に英国が欧州連合(EU)から離脱する前の2015年から2020年にかけて、英国の製造業は年平均0.7%の成長を遂げていました。また、200万人以上の新規雇用を生み出し、ブレグジット前の英国における成長率ランキングでは13位となっていました。産業研究開発や産業機械でのサービス雇用などの英国の多くの並行産業も、製造業に大きく依存しています。英国の製造業は、経済全体の約20%、雇用の25%を占めています。

 

また、英国の製造業はEUと密接な関係にあり、輸出入の50%以上を占め、自動車やテクノロジーなどの他のセクターとも強い相互関係にあります。これらの情報を考慮すると、2020年初頭にブレグジットが英国の製造業に与えた影響は当然のことと言えるでしょう。英国国家統計局(ONS)が2020年3月に発表したレポートによると、英国とEU間の輸出量は2020年1月だけで40.7%の大幅な減少となり、さらにこの期間の輸入量も28.8%減少しています。

 

しかし、2021年1月1日に発効した英国EUブレグジット貿易協力協定(TCA)は、業界のメーカーから大きく歓迎されています。英国とEUの間のメーカーに対する関税が撤廃されたことで、クォータを必要としない自由な貿易の動きが可能となり、メーカーにとっては絶大なプラス効果を生み出しました。また、英国のEU離脱により、目論見書を作成して個人投資家から資金を調達できる金額の上限(EUでは800万ドル)が撤廃されたことで、より自由な市場が形成され、製造業の市場は大いに活性化するでしょう。

 

さらに、英国の製造業市場への参入を模索する海外企業にも多くのメリットがあります。EU関税同盟の外では、英国は独自の貿易協定を結ぶことができ、その最初の協定が2020年10月に 日本と締結されました。この協定は、この種のものとしては初めてのもので、中小企業の製造業を含め、日本企業が英国市場に参入するための市場アクセスの改善を促進しました。また、この協定は英国が同様の自由貿易協定を結ぶ際の基準となり、東アジア諸国のみならず、世界中からの市場アクセスが改善される可能性を秘めています。

筆者:
Anna Cranston

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