英国・欧州市場参入のためのヘルスケア規制要件

英国と欧州は世界最大級のヘルスケア市場を有しており、米国と比較しても世界第2位の医療費を支出する地域です。ドイツは2019年にGDPの11.9%を医療費に費やしているのに対して、米国では17.7%となっています。しかし、米国とは異なり、欧州でのヘルスケア市場参入、そして患者達まで達することは著しく困難な状況となっています。

 

欧州における医薬品、医療機器、医療技術の承認・監視は、欧州医薬品庁(EMA)への単一の販売承認申請を通じて行われます。EMAはいくつかの委員会で構成されており、これらの委員会は、医薬品やバイオテクノロジー企業が製造販売承認申請を行う際に、科学的なガイドラインや規制面での支援を提供するために活動しています。また、研究開発企業に科学的なアドバイスを提供し、EUおよび国際的な規制要件の策定にも貢献しています。EMAの欧州医薬品委員会(CHMP)は、これらの申請を科学的に評価した上で、その時点で医薬品や技術を販売すべきかどうかについて勧告を行います。 その後、欧州委員会はEMAの勧告に基づいて法的拘束力のある決定を67日以内に下します。欧州委員会の承認が得られると、この製造販売承認は、EUの全加盟国および欧州経済領域(EEA)のノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランドで自動的に有効となります。

 

英国では、医薬品および医療機器の規制は、英国保健省配下の行政機関である医薬品・医療製品規制庁(MHRA)によって行われています。2020年1月の英国のEU離脱に伴い、2021年1月にMHRAから新しいガイダンスが発表されました。新ガイダンスでは、臨床試験、医療機器、輸出入、ITシステム、法規制、医薬品安全性監視、小児科に関わる規制の変更について概説しています。MHRAはまた、患者と医師を対象としたイエローカード制度を実施しています。この制度は、医薬品や医療機器の副作用や有害事象の疑いなど、安全性に関する情報の収集とモニタリングを行っています。また、政府外公的機関である英国国立医療技術評価機構(NICE)は、医療と臨床結果の両方を改善するための国家的なガイダンスを提供しています。新興産業は、対象となるサービスを通じて、医療技術の開発中にNICEと直接的に関わることができます。その中には、医療機器、診断用薬、デジタルヘルス技術をNHSにつなぐ「HealthTech Connect」や、英国の医薬品パイプラインにおける新薬、適応症、製剤などの情報を集めたデータベース「UK Pharma Scan」などがあります。

 

欧州における医療機器規制については、2021年5月26日付で開始された欧州体外診断用医療機器規則(Regulation EU 2017/746)とともに最近、欧州医療機器指令(MDD)が、欧州医療機器規則(Regulation EU 2017/745)に置き換えられました。さらに、英国市場に入る体外診断用医療機器(IVD)を含むすべての医療機器は、2021年1月1日付でMHRAに登録する必要があるようになりました。また、欧州市場に参入するすべての医療機器はCEマークを取得する必要があり、英国に参入する医療機器にはMHRAによるUKCAマークの追加取得が求められています。

筆者:
Anna Cranston

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